初めて「雪の華」を聴いたとき、何かが胸を突き上げた。
言葉にできない感情が溶けていくようで、ただ静かに涙が頬を伝った。
それは恋の歌というよりも、存在そのものを受け止める祈りのようでもあった。
本稿では、中島美嘉の「完成された美学」とも言えるこの楽曲の魅力に迫ってみたい。
1.数字で見る「雪の華」の社会的インパクト
2003年にリリースされた「雪の華」は、中島美嘉の7枚目のシングル。
オリコン週間チャート初登場3位を記録し、累計売上は50万枚を突破。
配信世代の現在においても根強い人気を誇り、2023年時点でのストリーミング再生数は1億回を超えている。
また、韓国・中国・東南アジアでも多くのアーティストにカバーされ、「アジアをつなぐラブソング」と称されることもある。
映画やドラマ、CMにも起用されるなど、いわば“日常に潜む名曲”として定着。
特筆すべきは、2018年の映画『雪の華』で楽曲をモチーフとしたストーリーが作られたこと。
ここまで一曲が物語化され、独立した世界観として展開されるのは稀であり、「雪の華」が音楽以上の存在である証左となっている。
出典:Sunrise
2.美しさに宿る「余白」の芸術
「雪の華」が涙を誘う理由を言語化するのは難しい、その難しさこそが、この曲の美しさを裏付けている。
声は力強くも繊細で、表現としては“語らない勇気”が際立つ、たとえば歌い出しの「のびた人陰を…」という一節。
そこにあるのは説明ではなく、ただ情景の断片が浮かぶのみである。
詞は決して多弁ではないが、その余白が聴き手の記憶や感情を引き出す、中島美嘉の声質も、完全無欠でありながらどこか壊れそうな儚さを感じさせる。
この「完成された未完成」ともいえるバランス感覚が、無防備な心を揺らす、まるで静けさの中にこそ本質が潜むという“日本的美学”が、音楽として結実しているのだ。
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