Cold War Kids – Miracle Mile – 奇跡の曲を生み出す方法


Cold War Kidsの代表曲「Miracle Mile」は、ひとたび耳にすれば忘れられない疾走感にあふれています。

ピアノとドラムが交互に畳みかけるリズム、叫びにも似たボーカル、そして曲全体を貫く強い意志。

では、彼らはいったいどうやってこんな曲を書けたのか。音楽の技術だけでは語りきれない「創作の力」に焦点を当ててみます。

本記事では、Cold War Kidsがこの曲に込めたエネルギーの正体を、構造・表現・狙いの3つの観点から考察していきます。

1. 楽曲の背景と制作のアプローチ

「Miracle Mile」が誕生したのは、Cold War Kidsがインディーからメジャー感覚に足を踏み入れた時期です。

それまでのブルージーで粗削りなサウンドから一歩進み、より明確なメロディと構成美を意識した制作スタイルが導入されました。

  • 曲作りはボーカルのNathan Willettを中心に行われ、キーボードのリフから発想されたと語られています。

  • メンバー全員がそれぞれのパートに意見を持ち寄り、何度もリハーサルを重ねながら、ライブでの映えも考慮したアレンジに仕上げたとのこと。

  • 制作時期はアルバム『Dear Miss Lonelyhearts』の後半で、勢いと感覚に任せたインスピレーションが色濃く反映されています。

このように「Miracle Mile」は、“理屈より感触”を優先するプロセスで練られた、まさに「その瞬間にしか生まれ得なかった曲」と言えます。


出典:Youtube(ColdWarKids)


2. 構造とサウンドの緻密さ

「Miracle Mile」は一聴するとシンプルに聴こえますが、その構造には綿密なバランス感覚があります。

2.1 ピアノとリズムの設計

冒頭のピアノリフは、実は単純なコード進行の繰り返しですが、アクセントの付け方が絶妙で、耳に引っかかるリズムを生んでいます。

ドラムはスネアとバスの位置をわずかにずらすことで、躍動感と引っかかりを両立。結果として、前のめりな推進力が生まれています。

2.2 ボーカルの緊張感

サビにかけてのボーカルは、力任せにならずギリギリのテンションで持ちこたえています。

「何かに手を伸ばし続けるような声」が、歌詞の内容とも相まって、聴き手に“走り続けること”の意味を問いかけてきます。