静かに始まって、気づけば深く心に残っている。
初めて青葉市子の音楽に触れたとき、そう感じた人も多いはず。
彼女の音楽は「音」なのに「風景」のようで、「声」なのに「記憶」のよう。
今回は、そんな青葉市子さんの最新作や活動を通して、彼女が“アーキテクト”と呼ばれる理由を探ってみます。
1.最新作『Luminescent Creatures』が描く“内なる世界”
2025年2月にリリースされたアルバム『Luminescent Creatures』。
これは彼女にとって、物語性の強かった『アダンの風』(2020年)に続くような作品です。
このアルバムは、“光る生き物たち”というタイトルが示すように、人の内面に宿る小さな命のきらめきを、音でそっと描いているような印象があります。
英メディアでは「細部の音に宿る詩情」と評され、ビルボードのWorld Albumsチャートでも17位を記録。
Metacriticのスコアは平均86点と、海外からの評価も非常に高いです。
ガツンとくる派手さではなく、心の奥に染みこんでいくような静けさの力強さ、このバランス感覚こそ、青葉市子らしさだと思います。
出典:KEXP
2.10年かけて築いた“静かに届く世界”
デビューは2010年、アルバム『剃刀乙女』から。
このとき、まだ19歳。クラシックギター1本と声だけで勝負するスタイルでした。
その後もずっと、自分の世界を静かに深めながら歩んできた印象があります。
『0』(ゼロ)、『ラヂヲ』、そして『アダンの風』へと続く道は、どれも「ひとりの人間の旅」と呼びたくなるような作品ばかり。
特に『アダンの風』では、沖縄や奄美を旅して得た感覚を音で表現。
まるで映画のサウンドトラックのような構成が特徴でした。
近年ではヨーロッパ、アジア、北米などを巡るツアーを展開し、各地でライブのたびに満席となる人気ぶり。
言葉が通じなくても、音で人とつながれる——それを証明する存在です。