いつかは自分のPCにも量子チップが搭載される――そんな未来が、現実味を帯びてきました。
でも、そもそも「量子ビット」って何なのでしょう?
ふつうの「0か1」ではないって聞くけど、どう違うのかピンとこない人も多いはず。
今回は、そこを丁寧にかみ砕いて紹介します。
1.普通のビットと何が違う?「重ね合わせ」がカギ
今使っているパソコンやスマホの中身は、「ビット」と呼ばれる最小単位の情報で動いています。
ビットは、スイッチのように「0」か「1」のどちらかにしかなれません。
たとえば「0=OFF」「1=ON」と考えると、なんとなくイメージしやすいですね。
一方、量子コンピュータで使われる「量子ビット(qubit)」は、ここが根本的に違います。
量子力学の性質を利用することで、「0」と「1」を同時に取るという“重ね合わせ”状態になるんです。
これは「どちらか」ではなく、「両方」という状態。
まるでコインが空中で回転しているようなもの。
この重ね合わせが意味するのは、並列に計算ができること。
2つのqubitがあれば「00」「01」「10」「11」という4つの状態を一気に扱えます。
だから、理論上は普通のコンピュータよりもケタ違いに速い演算が可能になるんですね。
2.見えないけれど計算に効く「量子の干渉ともつれ」
重ね合わせだけでは、まだ片手落ちです。
量子コンピュータのすごさは、もうひとつの性質―干渉(インターフェア)にあります。
量子ビットは、複素数(虚数を含む数)で表現される振幅を持っています。
この振幅が複雑に“波”のように干渉することで、正解の確率を高め、誤りの確率を低くするという操作ができます。
これが、量子アルゴリズムのキモとも言える動作原理です。
さらに特筆すべきは「エンタングルメント(量子もつれ)」。
2つ以上のqubitが、距離を超えて密接に関係し合う状態です。
これにより、「片方が0ならもう片方は1」といったように、単体ではなくセットで動作することが可能になります。
この“もつれ”は、古典的なビットにはない、量子特有の魔法のような現象です。
遠く離れた量子ビット同士が連動する……まるで双子のような連携性。
この性質が、暗号解読や新薬の分子シミュレーションなどで注目されています。
出典:量子技術チャンネル