局面ごとの戦術理解
前線からのプレス
偽9番がコースを切りつつ寄せ、ウイングが外切り、ロドリが中盤でカバー、相手の縦パスを遮断。
奪えなければ全員が一気に撤退しブロックへ移行。
守備ブロック時
自陣ではコンパクトな4-4-2気味のブロックを形成、中盤とDFラインの間を詰め、中央を固める。
相手がサイドに展開したときのみSBが前へ出て制限をかける。
ビルドアップ時
エデルソンが最初のパスを供給、CB+アンカー+SBで三角形を作り、相手FWのプレスを誘い出してから縦パス。
ポゼッション率はリーグトップの平均60%を記録。
フィニッシュの形
ハーフスペースからのスルーパス、逆サイドへの展開、3人目の動きが連続する。
ギュンドアンはリーグ戦13得点、これはペップ戦術の象徴的成果。
トランジションの戦術分析
ネガティブトランジション
攻撃失敗後は即座に5秒間のゲーゲンプレス。
高い位置で奪い返せれば二次攻撃、奪えなければ撤退。
ディフェンストランジション
プレスが外された瞬間、全体が連動して後退。
4-4-2の形に整い、再度相手の攻撃を遅らせる。
ポジティブトランジション
ブロック守備から奪ったら、逆サイドへ大きく展開。
相手が整う前にフィニッシュまで持ち込むのが理想形。
オフェンストランジション
ボールを奪った瞬間、縦へのパスを最優先。
サイドまたはハーフスペースで前向きに受け、素早くフィニッシュへ移行。
対戦相手の戦術との相性
チェルシー
・3バック+5レーンを守備で消す戦術を徹底。
・中盤のカンテ、ジョルジーニョがシティの循環を分断。
・相性としては「ポゼッションを消されると不利」となる組み合わせ。
リヴァプール
・ハイプレス+高速トランジションで真っ向勝負。
・シティは冷静にプレスを外し、ポゼッションで支配。
・相性としては「プレスをいなせる分、シティ有利」な展開。
マンチェスター・ユナイテッド
・低いブロックとカウンターが徹底され、シティは苦戦。
・ラッシュフォードやマルシャルの裏抜けに悩まされる。
・相性としては「ボール保持を強いられると不利」で、苦手な相手。
ドルトムント
・若いハーランドを軸にカウンターが主体。
・シティは中盤で相手を抑え込み、2戦合計4-2で勝利。
・相性としては「個の突破には苦労するが、組織では優位」。
出典:Man City
弱点らしきポイント
華麗な支配と完成度の高さを誇ったシティにも、克服しきれなかった課題がありました。
それは「堅守速攻を敷く相手への脆さ」と「大舞台での決め切る力の不足」です。
リーグ戦では多くのチームを圧倒しましたが、カウンターが鋭い相手に対しては、最終ラインの背後を突かれる場面が目立ちました。
特に両SBが高い位置を取る分、リスク管理を誤れば一瞬でピンチに陥ります。
また、決定的な場面でCF不在が響きました。
ギュンドアンやデ・ブライネの得点力で補いましたが、チャンピオンズリーグ決勝では「決め切る一撃」を欠き、チェルシーを相手に敗退しました。
まとめ
マンチェスター・シティ2020-21は、現代サッカーを最も体系化したチームでした。
選手配置、攻撃と守備、トランジションのすべてにルールと優先度があり、データでも支配率・得点・失点が高水準で安定、内容と結果が一致した戦術でした。
CL決勝ではチェルシーに敗れたものの、ピッチ全体がひとつのシステムのように機能する姿は、まさにサッカーを“システム”として見せてくれたシーズンでした。