夜の部屋に針が落ちる音が響く。
窓の外ではかすかな風が街灯を揺らし、淡い光がガラスに反射する。
そんな時間にSlow Pulpの音楽を流すと、心の奥に静かに染みこんでくる。
言葉にならなかった気持ちが、少しずつほどけていくような感覚がある。
1.Slow Pulpとは:どんなバンドなのか
Slow Pulpはアメリカ・シカゴを拠点に活動するインディーロック/ドリームポップ系のバンド。
メンバーはエミリー・マッセイ(Vo/Gt)、ヘンリー・ストーア(Gt/制作)、アレックス・リーズ(Ba)、テディ・マシューズ(Dr)の4人。
これまでに次のアルバムを発表している。
- Moveys(2020年) ― デビュー作。パンデミックの時期に制作され、内省的で繊細なトーンが光る。
- Yard(2023年) ― フォークや’90年代オルタナの要素を交えた作品。ドリーミーで温かい質感を持つ。
- Moveys (Deluxe Edition)(2025年1月) ― 未発表曲やKEXPライブ音源を加えた拡張版。ファン必聴の内容。
2025年5月にはシカゴ近郊の大学イベント「Dillo Day」でメインステージを務めるなど、ライブ活動も積極的に展開している。
2.Slow Pulpの音楽がもたらすもの
彼らの音楽には「静けさの中の揺らぎ」が宿っている。
ギターはふわりと広がるリヴァーブで包まれ、時にはオルタナティブな粗さも顔を出す。
そこに重なるエミリーのボーカルは、囁きのようでいてしっかり芯を持っている。
歌詞は孤独や自己との対話をテーマにしたものが多い。
“Doubt”では「自分を信じたいけれど揺らいでしまう」という心情が描かれており、聴く側も自然と共感してしまう。
制作の背景にも“親密さ”がある。
たとえば『Yard』はエミリーの父親のスタジオで録音されており、家庭的な空気感が音に反映されている。
夜の静けさや過去への後悔、新しい環境での不安。
そうした小さな感情の波を、Slow Pulpは音でそっとすくい上げている。
出典:Slow Pulp