DJ_DAVE – ライブコーディング・エレクトロニックアーティスト

SNOW

2025-10-27

コードの文字列がステージ上で踊り出すようなライブ、想像できますか?

DJ_DAVEは、その想像を現実に近づけているアーティストです。

ライブコーディングで音楽をリアルタイムに紡ぎながら、ポップとテクノの狭間を行くサウンドを作る。

今回は、そんなDJ_DAVEの現在地と魅力を追ってみましょう。

1. DJ_DAVEとは何をしている人か?

1.1 コードで音を「演奏」するアーティスト

DJ_DAVEは、リアルタイムでコード(プログラム)を書きながら音楽を生成・編集する「ライブコーディング(live coding)」をライブパフォーマンスに取り入れる先端的なアーティストです。

この手法では、ステージ上で「どんな音が出るか」をコードの書き替えで制御するため、観客には演奏と制作行程が重なって見えます。

彼女自身も、「音楽をコードで作るエレクトロニックポップ」というスタイルを明言しています。

1.2 活動実績とリスナー数

  • Spotifyでの月間リスナー数は約 224,637人(直近)とされています。
  • SoundCloudでのライブコーディング版トラック「Cycles」は、2025年6月時点で公開されており、ファンからのリアクションも多数寄せられています。
  • 彼女は Tove Lo、Uffie、Channel Tres のリミックス制作を手掛けたこともあり、 音楽業界との接点も持っています。
  • 最近では JPEGMAFIA や Danny Brown のツアーに帯同したという記録もあります。

こうした実績から、地下的なライブコーディング界隈だけでとどまらず、より広い音楽シーンとも交差し始めている印象があります。

1.3 教える場・トークや講義も展開

DJ_DAVEは、ライブパフォーマンスだけでなく、大学などでライブコーディングのセミナーを行うツアーを展開するなど、教育・解説活動を重視しています。

“Always Learning Tour”という名義で、コンピュータサイエンス学部など理系学科の学生を対象に講演とライブを組み合わせる企画もあります。

こうした活動からは、「音楽家」であることに加えて、「技術と芸術の橋渡し役」という役割意識も感じられます。


2. 時系列で見る進化と転換点

ここでは、これまでの歩みを時系列で整理しながら、どの瞬間にスタイルが変化してきたかを見てみましょう。

  • ファッション専攻から音楽へ
     あるインタビューでは、もともとファッション・デザインの学生だったことが語られています。そこから音楽・テクノロジー方向へとキャリアを切り替えたルートが示されています。
  • ライブコーディングとの出会い
     彼女はライブコーディング環境「Sonic Pi」あたりからこの手法を使い始めたという記述があります。
     この出会いが転機となり、従来の DJ やプロデューサーの枠を拡張していったようです。
  • リリースと認知の広がり
     “Still Miss U” などの曲は、ライブコーディングで制作されたポップ・トラックとして注目を浴びました。
     また、2024年には “World’s Hardest Game” といったトラックを出しており、ライブ演奏とスタジオ制作の併存を示す例となっています。
  • 講義ツアーと教育展開
     上述の “Always Learning Tour” のように、2024年以降、大学キャンパスでのライブコーディング講義を含むツアーが積極化しています。

こうした流れを見ると、最初は「コーディング × 音楽表現」の探求者だったものが、徐々に公開活動・教育活動を併せ持つアーティストへと変化してきた印象があります。


3. 魅力と課題 ― なぜ注目を集めるのか

複雑性とリアルタイム感

ライブコーディングは、演奏者がコードの動きをリアルタイムで書き換えることで、即興性や変化を直接的に操作できる敷居の低さと複雑性を同時に持った表現技法です。

その点で、DJ_DAVEのライブは「演奏」と「制作」の境界を曖昧にします。
観客はただ聴くのではなく、「この瞬間、どんなコードが動いたのか?」を想像できるライブ体験を得られます。

また、ポップ・構造を持つメロディと、ライブコーディングが生むノイズ/グリッチ的な要素を融合させる手腕も彼女の強みのひとつです。

理解の敷居と普及のハードル

ただし、ライブコーディング表現にはいくつかの課題があります。

  • 一般リスナーからすれば、「何が生まれたか」は聞こえるものの、「どうやって」その音ができたかを追うのは難しい。
  • 独自の環境やソフトウェアを使うことが多いため、ライブ環境構築にコストとノウハウがかかる。
  • 演奏としてのキャッチーさと、ライブコーディングとしての実験性とのバランスを保つのも難題。

これらの壁を乗り越えるために、DJ_DAVEはポップ性を持つトラック制作や教育活動を併行しているのだと考えられます。


出典:DJ_Dave