ひんやりとした早朝の馬場、蹄が返す小さな砂埃の匂い。
そしてファンが静かに息を呑むスタンド、そんな情景を思い浮かべる。
この記事では「サンデーサイレンスとは何か」から、2025年現在の最新動向までを、初心者の方向けにわかりやすく解説します。
この講座を読めば、血統表を見たときに「サンデー系」が何を意味するか少しつかめるようになります。
サンデーサイレンスとは?血統史の出発点
サンデーサイレンスは、アメリカ生まれのサラブレッドで、現役時代はケンタッキーダービーやBCクラシックなどで勝利を挙げた名馬です。
日本には1990年代初頭に輸入され、種牡馬としての成功を通じて日本競馬の血統構造を根底から変えました。
日本国内では13年連続リーディングサイアーを達成し、その影響力は圧倒的でした。
この馬を原点に、数多くの後継馬が「サンデーサイレンス系(以降“サンデー系”)」として系統を築いています。
サンデーサイレンス産駒の主な活躍馬と種牡馬
サンデーサイレンスの産駒は、1990年代から2000年代にかけて数々の名馬を輩出しました。
ここでは、競走馬としての実績と、後に種牡馬として大きな影響を残した代表的な馬を紹介します。
主な産駒(競走成績の部)
- ディープインパクト:日本ダービー、天皇賞(春)、有馬記念などGⅠ7勝。日本競馬史上最高の瞬発力を持つと評される名馬です。
- スペシャルウィーク:日本ダービーとジャパンカップを制覇。気性の安定した万能型で、サンデー産駒の中でも「理想的なバランス型」と呼ばれました。
- ステイゴールド:GⅠ制覇までに時間を要した晩成型。香港ヴァーズで海外GⅠを勝利し、後に多くのスタミナ型産駒を輩出します。
- ハーツクライ:有馬記念でディープインパクトを破った唯一の存在。ドバイシーマクラシックでも世界を制しました。
- アグネスタキオン:皐月賞馬。脚部不安で早期引退するも、種牡馬として優秀な後継を残しました。
- ダンスインザダーク:菊花賞馬。スタミナと粘り強さに定評があり、牝系に力を与えた種牡馬です。
- サイレンススズカ:スピードと逃げの象徴。秋の天皇賞で不運な故障に見舞われながらも、その走りは今なお語り継がれています。
主な種牡馬(血統継承の部)
- ディープインパクト系:現代のサンデー系の主流。後継にコントレイル、キズナ、リアルスティールなど。
- ステイゴールド系:オルフェーヴルやゴールドシップを輩出。個性派・根性型の血を引き継いでいます。
- ハーツクライ系:ジャスタウェイやスワーヴリチャードなどを輩出し、スタミナ型の系統として評価を確立。
- アグネスタキオン系:ディープとは異なる方向で完成度を追求し、ダイワスカーレットなどの名牝を生みました。
このように、サンデーサイレンスの血は単なる一系統にとどまらず、複数の方向性へ枝分かれしながら、日本競馬を支える巨大な森のような存在へと発展しました。
サンデー系の特徴と“尖り”の理由
瞬発力と切れ味の強さ
サンデー系の走りに共通するのは、スイッチが入るような鋭い加速感です。
持久力だけで粘るタイプではなく、レース後半の勝負どころで一瞬のキレを生かすことを得意とします。
芝中距離やクラシック路線で特に強さが目立つのは、その瞬発力が真価を発揮するからです。
気性・勝負根性・爆発力
他血統と比べて、気性の強さを伴うことが多いのもサンデー系の特徴です。
ときには折り合い難やムラを抱えますが、それをコントロールできた馬は爆発的な強さを発揮します。
この「荒々しさ」を含めて、マイルドで安定性重視の血統と一線を画す存在感を持っています。
多様な距離適性を含む“バランス”
サンデー系はスプリントから中長距離までレンジが広く、
切れ味重視型、持続力型、スタミナ型など多様なタイプを生み出せる柔軟性があります。