AI時代に変わる「相談の入口」と人間カウンセラーの役割
2024年以降、AIを使ったメンタルヘルス支援ツールが一気に増えました。
瞑想アプリやセルフケアアプリ、ストレス状態をチェックしてくれるAIコーチなど、企業向けのサービスもたくさん出ています。
一方で、「AIチャットボットをセラピスト代わりに使うこと」には世界的に強い懸念も出ています。
イギリスの公的医療機関や各国の専門家は、AIが危機的状況にうまく対応できなかったり、誤った助言をするリスクを何度も指摘しています。
アメリカの一部の州では、AIチャットボットを人間のセラピー代替として使うことを制限する法律も登場しました。
こうした流れから見えてくるのは、「AIは入り口や補助としては便利だけど、専門的な支援の中心は人間が担い続ける」という方向性です。
企業向けの健康経営レポートでも、AIはメンタル不調の早期検知やセルフケア支援に役立つ一方で、「複雑なケースや高リスクのケースは、必ず人間の専門職につなぐべき」とされています。
つまり、AIの普及は心理カウンセラーの仕事を奪うというより、「どこから人間にバトンを渡すか」を設計する役割を増やしているとも言えます。
AIが拾い上げた「気になるサイン」を人間のカウンセラーがきちんと受け止め、対話と関係性の中で支えていく。
この連携をうまく設計できる人材は、これからかなり重宝されるはずです。
これから伸びそうなフィールドと必要なスキル
2026年時点で、「これから需要が増えそうだな」と感じられる領域をいくつか挙げてみます。
- ハイブリッドワーク企業でのメンタルヘルス支援
- 中小企業向けの外部カウンセリングサービス
- デジタルメンタルヘルスサービスとの連携ポジション
- 若年層・デジタルネイティブ向けの相談窓口
- 管理職・リーダー向けのメンタルヘルス研修とコーチング
こうした場で求められやすいスキルは、次のようなものです。
- 傾聴や共感をベースにしたカウンセリングの基礎スキル
- メンタルヘルスに関する基礎的な心理学・臨床知識
- 組織やチームの構造を理解する力
- オンラインツールやデジタルサービスへのリテラシー
- 管理職や経営陣ともフラットに話せるコミュニケーション力
特に企業領域では、「個人の相談だけでなく、組織全体の空気や構造を見て、どこに手を入れると楽になるか考えられる人」が重宝されます。
カウンセリングの資格だけでなく、これまでの仕事経験やマネジメント経験が、そのまま強みになる世界です。
社会人経験が長い人ほど「カウンセラー適性」が出やすい
個人的な感想として、心理カウンセラーの仕事は、20代よりも30代後半〜40代以降のほうが「しっくり来る人」が多いと感じています。
理由はシンプルで、「人間関係のしんどさ」を自分自身もそれなりに体験してきているからです。
職場での板挟みや、理不尽さ、評価されないもどかしさなどを経験してきた人ほど、相談者の「言葉にしづらいモヤモヤ」に寄り添いやすくなります。
もちろん、単に年齢が高ければ良いという話ではありません。
自分の経験を押し付けず、「そう感じるのは無理もないよな」と一度受け止められるかどうかが大きなポイントです。
40代以降で心理カウンセラーの勉強を始める人は、最初は「今からでも遅くないかな」と不安になることが多いです。
でも、今の職場環境や社会の状況を見ていると、「むしろこれから本格的に必要とされるのは、この世代の落ち着いたカウンセラーでは」と感じる場面が増えています。
AIやデジタルツールは、たしかに便利です。
ただ、人の心が動く瞬間は、やっぱり「誰かにちゃんと聞いてもらえた」という体験のなかにあることが多いです。
その役割を担う人が増えることは、働く人にとっても、組織にとっても、じわじわ効いてくる「良い投資」だと思います。
出典:ABEMA Prime #アベプラ【公式】
まとめ
2026年のいま、心理カウンセラーを取り巻く環境は、静かですが着実に変化しています。
メンタルヘルス対策をする事業所は全体の6割を超えつつも、まだ十分に機能していない職場が多くあります。
ハイブリッドワークや人手不足、孤立感の高まりなど、ストレスの質そのものも変化しています。
AIやデジタルツールは「相談の入口」として広がる一方で、「最終的に人を支えるのは人」という認識も、各国の議論や規制のなかでむしろ強まっています。
企業内、医療・福祉、教育、行政、オンラインなど、心理カウンセラーが活躍できる場はすでに広がっており、これからさらに多様化していきます。
社会人経験が長い人にとっては、「これまでのキャリアを活かしながら、人の心を支える側に回る」という選択肢が、現実的なキャリアパスになりつつあります。
「需要が急増するかもしれない」というより、「静かに、でも確実に必要とされ続ける職業」になっていく。
この記事が、その一歩を考えるきっかけになればうれしいです。
参考
- 厚生労働省「令和5年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」 (厚生労働省)
- 独立行政法人 労働政策研究・研修機構などによる職場メンタルヘルス実態の紹介記事 (一般社団法人日本産業カウンセラー協会 九州支部)
- 経済産業省「職域の心の健康関連サービスの創出と活用に向けて」 (経済産業省)
- リモートワークとメンタルヘルスの変化を扱った海外研究 (journalijsra.com)
- AIとメンタルヘルス支援、そしてリスク・規制動向に関する各種レポート・ニュース (eMazzanti Technologies)
※続・全体チャットで間違い指摘はやめたほうがいい理由|まともな人はやってないシリーズ#02