夜空の下、イスタンブールのアタテュルク・スタジアムは赤と白に染まっていました。
UEFAチャンピオンズリーグ決勝、リヴァプール対ACミラン。
前半終了時のスコアは0-3、誰もが勝負ありと思ったでしょう。
しかし後半、そこから歴史的なドラマが始まります。
1. ミランが前半で優位に立った理由
ACミランは当時、欧州屈指の戦力を誇るチームでした。
フォーメーションは4-4-2のダイヤモンド型。
ピルロが底から展開し、トップ下カカがライン間でボールを受け、クレスポとシェフチェンコが裏へ抜け出す。
開始1分のマルディーニのゴールで勢いに乗り、39分と44分に追加点を奪って3-0。
数字の裏には、中央で数的不利を強いられたリヴァプールの構造的な弱さがありました。
サイドを使わないミランの布陣に対して、リヴァプールの両SBは宙に浮き、守備人数は足りない。
さらに攻撃の要として先発したキューウェルは負傷交代。
これも痛手でした。
冷静さを保ったミランと、焦りで間延びしたリヴァプール。
このコントラストが前半の結果を生んだのです。
2. ベニテスのハーフタイムの秘策
0-3で迎えたロッカールーム。
選手たちは沈黙し、絶望が漂っていました。
しかしラファエル・ベニテス監督は感情的にならず、戦術修正を指示します。
守備陣形を3バックに切り替え、中盤にハマンを投入して数的不利を解消。
両ウイングバックを高く配置し、サイドを起点にミランの守備を広げるよう求めました。
これによりジェラードは攻撃に専念できる位置に解き放たれます。
「まず1点」と強調された狙いが現実となり、後半9分、ジェラードのヘディングで反撃がスタート。
6分間で3得点。シュミツェルのミドル、アロンソのPK弾と続き、スコアは3-3。
ベニテスの冷静な策が、流れを一気に引き寄せた瞬間でした。