Slow Pulp – アメリカ・シカゴ発の心を解くインディーロックバンド

SNOW

2025-10-10

夜の部屋に針が落ちる音が響く。

窓の外ではかすかな風が街灯を揺らし、淡い光がガラスに反射する。

そんな時間にSlow Pulpの音楽を流すと、心の奥に静かに染みこんでくる。

言葉にならなかった気持ちが、少しずつほどけていくような感覚がある。

1.Slow Pulpとは:どんなバンドなのか

Slow Pulpはアメリカ・シカゴを拠点に活動するインディーロック/ドリームポップ系のバンド。

メンバーはエミリー・マッセイ(Vo/Gt)、ヘンリー・ストーア(Gt/制作)、アレックス・リーズ(Ba)、テディ・マシューズ(Dr)の4人。

これまでに次のアルバムを発表している。

  • Moveys(2020年) ― デビュー作。パンデミックの時期に制作され、内省的で繊細なトーンが光る。
  • Yard(2023年) ― フォークや’90年代オルタナの要素を交えた作品。ドリーミーで温かい質感を持つ。
  • Moveys (Deluxe Edition)(2025年1月) ― 未発表曲やKEXPライブ音源を加えた拡張版。ファン必聴の内容。

2025年5月にはシカゴ近郊の大学イベント「Dillo Day」でメインステージを務めるなど、ライブ活動も積極的に展開している。


2.Slow Pulpの音楽がもたらすもの

彼らの音楽には「静けさの中の揺らぎ」が宿っている。

ギターはふわりと広がるリヴァーブで包まれ、時にはオルタナティブな粗さも顔を出す。

そこに重なるエミリーのボーカルは、囁きのようでいてしっかり芯を持っている。

歌詞は孤独や自己との対話をテーマにしたものが多い。

“Doubt”では「自分を信じたいけれど揺らいでしまう」という心情が描かれており、聴く側も自然と共感してしまう。

制作の背景にも“親密さ”がある。

たとえば『Yard』はエミリーの父親のスタジオで録音されており、家庭的な空気感が音に反映されている。

夜の静けさや過去への後悔、新しい環境での不安。

そうした小さな感情の波を、Slow Pulpは音でそっとすくい上げている。


出典:Slow Pulp