会議室の空気がピリッと張り詰める。
上司が声を荒げて「なんでこんなこともできないんだ!」と叱責する。
周囲の人は「確かにそうかもしれない」と思わされ、言い返すことが難しくなる。
この「怒りが正しいことになる」瞬間こそ、パワーハラスメントの温床だ。
1.怒りが「正しさ」に変換される仕組み
人間は感情の影響を受けやすい。
怒りという強い感情は、内容の正しさとは無関係に「迫力=正当性」と錯覚させる効果を持つ。
心理学では「感情伝染」や「権威バイアス」と呼ばれる現象がある。
大きな声で自信を持って言う人の意見は、内容が薄くても納得されやすい。
この仕組みが、職場で「怒っている人が正しい」という誤解を生む。
2.パワーハラスメントが起きるプロセス
怒りが正しさにすり替わると、部下や同僚は萎縮する。
「自分が悪いのかもしれない」と思い込み、反論できなくなる。
その結果、指導の域を超えて「人格否定」や「過剰な叱責」が常態化する。
厚生労働省の調査によれば、職場でパワハラを受けたと答えた人は30%を超える。
その背景には「怒る人が正しい」という空気が強く影響している。
怒りに根拠を与えてしまうと、組織全体にパワハラ文化が広がってしまう。