夕闇が暮れ始めた国技館、観客席の拍手がざわめきに近づく、土俵の熱気が、蒸気のように立ち昇る。
その中心で、東の正横綱・大の里が渾身の一番を構えていた。
一体、どんな道を経てこの瞬間を迎えたのか、そして、これからはどう歩んでいくのか。
この記事ではデータと解析を交えつつ、新横綱・大の里の物語を辿ってみたいと思う。
横綱・大の里
出身は石川県津幡町、所属は二所ノ関部屋で、本名は中村泰輝(なかむら・やすき)。
現在25歳で、番付は東の正横綱です。
これまでに幕内最高優勝を5回、殊勲賞を2回、敢闘賞を3回、技能賞を3回獲得しています。
若くして安定した成績を残し、横綱として土俵を引っ張る存在になっています。
横綱昇進までの経歴
相撲を始めたきっかけ
大の里が相撲を始めたきっかけは、社会人大会で全国優勝経験のある父・知幸さんの勧めでした。
当初は野球をしたいと思っていましたが、足腰を鍛えるために相撲を始めることに。
幼い頃から体格に恵まれており、地元の相撲クラブで腕を磨きました。
学生相撲で着実に実績を重ね、名門・二所ノ関部屋に入門、角界での本格的な歩みが始まりました。
入幕後の躍進と横綱昇進
幕下から十両、そして幕内へと駆け上がるスピードは圧巻。
初土俵からわずか数年で三役に食い込み、堂々たる取り口で相撲ファンを魅了しました。
特に前に出る圧力と土俵際での粘り強さは大きな武器で、一番一番で力を出し切る姿勢は「横綱にふさわしい」と早くから評価されていました。
やがて大関に昇進し、安定して二桁白星を挙げる存在に。
決定的だったのは、強豪相手に勝ち星を積み重ねた一連の場所です。
上位陣に真っ向勝負で勝ち切る姿が、横綱推挙の声を一気に高めました。
そして2025年、日本相撲協会から満場一致で横綱昇進が承認され、25歳という若さで「東の正横綱」となり、歴史的な快挙を成し遂げました。
横綱昇進後の初優勝までの道のり
名古屋場所では苦しい逆境を強いられ、豊昇龍ともども優勝を逃しました。
横綱として初めて味わう悔しさに、基礎からの見直しを決意。
毎日の稽古で一番一番を大切にし、地道に力を積み上げました。
迎えた秋場所。
ここで真価を発揮し、千秋楽を前に13勝1敗の単独首位。
満員の国技館が期待に包まれるなか、横綱として堂々と土俵に立ちました。
しかし、千秋楽の本割で豊昇龍に痛恨の黒星。
成績は13勝2敗となり、優勝決定戦にもつれ込みます。
相手は同じく13勝2敗の豊昇龍。
直接対戦成績も、この千秋楽で2勝7敗と負け越していました。
重圧と不利なデータがのしかかる中、土俵中央で勝負の一番に臨むことになりました。
出典:日本相撲協会公式チャンネル