夕暮れのスタジアムに、オレンジの光が差し込む。
観客のざわめきが、緊張感に変わっていく。
その中央でエース=アイマールが一瞬の間を作り、ボールを操る。
まさに戦術の中心に立つ存在だった。
時代の背景
2003-04シーズンのヴァレンシアは、ラ・リーガとUEFAカップを制してダブルを達成。
リーグ成績は23勝8分7敗、勝ち点77。1試合平均得点は2.03と攻撃も安定していた。
ヨーロッパの舞台でも強さを発揮し、終盤のラウンドで抜群の安定感を示した。
当時はマドリードやバルセロナが注目を集める時代。
だが、ヴァレンシアは財政難にもかかわらず、緻密な配置と高い戦術性で存在感を放った。
「機能で勝つチーム」として、戦術面の完成度が高かったのが特徴だ。
選手構成とメイン配置
ラファ・ベニテス監督の下、堅守速攻を武器にラ・リーガとUEFAカップの二冠を達成。
- GK:カニサレス
- CB:アヤラ、マチェーナ
- SB:カルボーニ、トーレス
- DH:バラハ、アルベルダ
- AM:パブロ・アイマール
- WG:ビセンテ・ロドリゲス、ルフェテ
- CF:ミスタ
4-2-3-1が基本布陣で、アイマールが攻撃の軸、バラハとアルベルダがダブルボランチを形成。
得点源として覚醒したミスタ、守備はアジャラやカルボーニ、そしてGKカニサレスを中心に組織的に機能した。

選手配置の意味と戦術
- アルベルダとバラハ
中盤の支点で、守備と攻撃の切り替えを担う。アルベルダは低めでカバー、バラハは推進力を出す。 - アイマール
前線と中盤をつなぐ軸。自由に動きながら攻撃のリズムを作り出す。 - ウィング(ビセンテ・ルフェテ)
サイドで幅を確保しつつ、中に入りアイマールと連携。変化をつける存在。 - ミスタ
裏への抜け出しやスペース作りで前線を活性化。
この布陣は「守備は構造、攻撃は流動性」という思想を体現している。
出典:ASIAN KUNG-FU FOOTBALL