静かな雨に濡れたグラスゴーの夜、ハムデン・パークの照明が芝を白く照らした。
ジダンの左足が宙を切り、弧を描いたボールがゴール左上へ吸い込まれる。
スタンドの白が波打ち、九度目の欧州制覇が確信に変わった。
華やぎの裏側で、チームは同時に国内での難しさとも向き合っていた。
Contents
時代の背景
フロレンティーノ・ペレスが打ち出した「毎年ひとり世界的スターを獲る」という方針。
2001年夏に史上最高額でジダンを獲得し、「銀河系軍団」が本格化した。
このシーズンのハイライトはUCL制覇。
2002年5月15日、レバークーゼンを2-1で破り“ラ・ノベナ”を実現したが、リーガは3位。
勝点66(19勝9分10敗)と数字が物語るように、安定感を欠いた。
さらにクラブ100周年で迎えたコパ・デル・レイ決勝では、デポルティーボに1-2で敗れる屈辱を喫した
選手構成とメイン配置
スタメンの軸
- GK:イケル・カシージャス
- DF:サルガド、イエロ、エルゲラ、ロベルト・カルロス
- MF:マケレレ、グティ/ソラリ、フィーゴ、ジダン
- FW:ラウール、モリエンテス
得点源はモリエンテス(18得点)、ラウール(14得点)。
アシストはラウール(10)、ジダン(9)、フィーゴ(9)が並んだ。
ベースフォーメーション
基本は4-2-2-2。
“10”のジダンを中心に両翼をフィーゴとソラリ(あるいはグティ)が担い、攻撃の軸を形成した。
選手配置の意味と戦術
- ジダン:左ハーフスペースで創造性を発揮。
- フィーゴ:右サイドで幅と突破力を両立。
- マケレレ:攻撃陣を背後で支える守備バランサー。
- ラウール&モリエンテス:流動とポストの役割分担。
ロベカルの高い位置取りが左の幅を確保。
右はサルガドの推進力とフィーゴの可変で攻撃の厚みを生んだ。
出典:Menuju Kemenangan
戦術局面ごとの理解
守備ブロック時
自陣では4-4-2で中盤を締め、マケレレが前線への楔をつぶした。
相手陣内でのプレス
奪い切るよりも蹴らせて回収する意図が強く、限定的なプレッシングを採用。
後方からビルドアップ
CBとマケレレを起点に、左はロベカル+ジダン、右はフィーゴが単騎で打開する流れ。
相手ゴール前の崩し方
ラウールの動き出しで生まれるスペースにジダンが侵入。
サイドからはカットバックで決定機を作った。
攻撃戦術の基本的な考え方
ポジティブトランジション
奪った瞬間にフィーゴやラウールの縦抜けを狙い、ジダンに預けて展開を整える。
オフェンストランジション
SBが押し上げ、ジダンやイエロがミドルで脅威を加える二次攻撃が多かった。
ネガティブトランジション
ロスト直後はマケレレがストッパー役。
前線は即時奪回よりも帰陣を優先し、ブロックを再構築した。
ディフェンストランジション
SBの背後を突かれやすく、CBのスライドと逆SBの絞りが生命線。
中盤の運動量が落ちると被カウンターが増えた。
対戦相手の戦術との相性
バレンシア(リーガ優勝)
堅牢な4-4-2とトランジションの鋭さが苦手。
1勝1敗で痛み分けとなったが、停滞時間が長かった。
バルセロナ(CL準決勝)
カンプノウで0-2勝利、ホームは1-1。
オープンスペースを突いてジダンとラウールが輝き、勝負強さを示した。
デポルティーボ(国王杯決勝)
自陣の堅守とカウンターで背後を突かれ、100周年記念試合で敗北。
この戦術の弱点と呼べる要素
- 左の攻撃がロベカルに依存しすぎ。
- マケレレへの負荷集中。
- セットプレーと移行直後の整理不足。
- 国内では個頼みの展開が多く、勝点の積み上げが伸びなかった。
それでも「うまくいっていた」側面
欧州の舞台では、最難関の相手を連破。
準々決勝でバイエルン、準決勝でバルサを倒し、決勝でも勝ち切った。
リーガでも最多69得点を記録。
攻撃効率はリーグ屈指で、華やかな個の力が確かに結果を残していた。
出典:Zidane Video
まとめ
2001-02のレアルは欧州で頂点に立ちながら、国内では未完成さを露呈した。
数字が示す通り、UCL優勝、リーガ3位、国王杯準優勝という成果と課題が混在する。
マケレレの奮闘とスター選手の個の力が光った一方で、移行局面の脆さも露わになった。
それでもハムデン・パークの夜に生まれたジダンの一撃は、戦術を超えて語り継がれる。
「豪華=最強」とは限らないが、最難関の夜に解を示せるのがレアル・マドリードの真骨頂だった。