「がんばらなくていい」と言われても、心はいつも焦ってしまう。
そんな時にそっと寄り添ってくれる音楽がある。
ハンバート ハンバートの音楽は、日常の中の曖昧さや迷いすら包み込んでくれる。
今回は、彼らの音楽がなぜ「がんばりすぎない」のに魅力的なのかを掘り下げていく。
1．データが示す「聴かれ方」と存在感
ハンバート ハンバートは1998年に結成され、2000年代から少しずつ支持を広げ、2020年代に入ってからは再評価と新規リスナーの獲得が目立つようになった。
Spotifyでは2024年時点で月間リスナー数が約20万人を超えており、特に20代後半～40代の男女に根強い人気を持つ。
彼らの代表曲「おなじ話」はSpotify単独でも1,000万回以上再生されており、YouTubeでも多くのカバー動画が上がっている。
売上や配信数としてはメジャーシーンの派手な数字とは異なるが、ライブ動員やロングテールでの聴取が多く、「生活のそばにある音楽」としての存在感がある。
また、テレビCMや映画での楽曲使用も相次いでおり、「自然体な音楽」としてブランド的な役割を担う場面も増えている。
数字に現れない“心の中の支持”が、彼らの最大の強みだと言えるだろう。
2．音楽性に宿る「Chill力」
ハンバート ハンバートの最大の特徴は、聴く人を励ましながらも、決して背中を押しすぎない点にある。
例えば『おなじ話』では、ただ日常の会話を繰り返すような詞が並ぶ。
しかしそこには、「同じことを何度も話せる関係性」への愛情と、「それでいいんだよ」という静かなメッセージが込められている。
彼らの音楽にはドラムの激しいビートも、ギターの歪みもない。
ほとんどの楽曲はアコースティックギターやリズムを抑えた打楽器によって成り立っており、歌声はあくまで自然体。そのアレンジの“省略”は、聴く側に解釈の余白を残してくれる。
また、音域や歌唱にも無理がない。力を入れて叫ぶことはなく、むしろ語りかけるように紡がれる。
それが、聴く側の気持ちを押しつけがましくなく溶かしていく。
この“がんばらなさ”は、単なるゆるさではなく、引き算の美学とでも呼ぶべき設計によって成立して、それゆえに、彼らの音楽は時を重ねるごとに「磨かれていく」。
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