昔は当たり前にあった光景が、気が付けば今では「贅沢」と呼ばれるようになってきました。
経済や生活水準の変化だけでなく、社会の価値観が大きく揺れ動いた証拠でもあります。
私たちが子どもの頃に当然だと思っていたものが、今や特別な体験になっている。
その変化を振り返ることで、現代社会のリアルな姿が浮かび上がってきます。
1.食卓での変化から見える贅沢
昭和から平成初期にかけて、家族そろって夕食を囲むことは当たり前でした。
総務省の調査によると、1990年代は平日の夕食時に同居家族の7割以上が同じ時間に食卓についていましたが、近年は4割を切るといわれています。
共働き世帯の増加や、外食・中食の普及が背景にあります。
また、果物が毎日のように食卓に並んでいた時代もありました。
しかし農林水産省の統計によると、日本人1人あたりの果物消費量は1980年代から比べて約3割減少しています。
価格高騰や手間を嫌う生活スタイルの変化により、果物は「特別な日に食べるもの」となりつつあるのです。
2.住まいと暮らしの快適さの変化
かつては縁側で風を感じながら昼寝をするのが夏の風物詩でした。
しかし都市化の進展や住宅事情の変化で、縁側のある家は激減。
国土交通省の住宅統計調査では、2000年から2020年にかけて「和風住宅」の割合が3分の1以下に落ち込んでいます。
また、銭湯も昔は日常生活の一部でした。
厚生労働省によると、全国の公衆浴場数は1970年代の約2万軒から2023年には約3,000軒まで減少。
「家のお風呂」が普及して銭湯は減りましたが、逆に今では“癒し”を求めて足を運ぶ贅沢な空間になっています。