アラスカでは毎年のようにマグニチュード7前後の地震が発生しています。
にもかかわらず、大きな被害が抑えられているケースが多く、その秘密は建築にもあります。
本記事では、アラスカの建築方法を最新のデータとともに解説し、
日本でも応用できる考え方を丁寧にひもといていきます。
1.アラスカで発生している地震の実態
アラスカ州は北アメリカで最も地震活動の活発な地域であり、2025年もその傾向に変化はありません。
米国地質調査所(USGS)の2025年7月時点の発表によれば、アラスカでは年平均1回以上、M7.0以上の地震が確認されています。
直近では、2025年7月16日にアリューシャン列島沖でM7.3の地震が発生し、津波警報が出されたものの大きな被害には至りませんでした。
このような大規模地震は2023年7月(M7.2)、2021年(M8.2)など、過去数年にもわたって定期的に発生しています。
アラスカ南部からアリューシャン列島にかけては、太平洋プレートが北米プレートに沈み込む「アリューシャン沈み込み帯」が存在します。
これは日本の東北地方沖と非常によく似たプレート境界であり、同様のメカニズムで地震と津波が発生します。
そのため、アラスカの居住者にとって地震は「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」という前提で対策がとられているのです。
2.揺れに耐えるための家づくりと思想
アラスカの住宅建築は、「揺れを避ける」のではなく「揺れを受けても倒れない」ことを重視しています。
これを支えているのは、設計のシンプルさ、構造の柔軟性、そして地域住民の思想です。
まず、建物は1〜2階建てが圧倒的に多く、平屋もよく見られます。
屋根は急傾斜の切妻屋根で、積雪や落雪を想定した構造になっていると同時に、揺れたときの重心を低く保つための設計にもなっています。
構造材は木が主流です。木造建築は適度なしなりがあり、地震エネルギーを吸収しやすいのが特徴です。
特に、北米の建築基準に準拠した「プラットフォームフレーミング」方式が一般的で、これは日本のツーバイフォー工法とも類似しています。
耐震性に加えて断熱性にも優れているため、極寒のアラスカにおいては非常に理にかなっています。
また、断熱材を厚くし、ガスや電気が止まっても室温を保つように設計されている家も多くあります。
これにより、仮に地震後にインフラが停止しても、命を守るための「時間」を確保することができます。
思想面では、「助けが来るまで自立して生き延びる」という意識が強く、家の設計や備蓄にもその姿勢が反映されています。
薪ストーブ、独立した発電機、食品備蓄スペースなどが組み込まれた家も一般的です。