いま、モンゴルという国が静かに注目を集めている。
首都ウランバートルでは都市開発が急速に進み、人口集中が進行中だ。
一方で、草原では今も数十万人が遊牧民として暮らし、伝統を守り続けている。
この国では、都市化と遊牧という対照的な生き方が、奇跡的に共存している。
1. 遊牧民の継続する生活と変化
モンゴルの総人口約350万人のうち、およそ30%が遊牧的、または半遊牧的な生活を続けている。
彼らは主に羊、ヤギ、牛、馬、ラクダなどを飼育しながら、年に数回の移動を行い、季節に応じた暮らしを営んでいる。
この伝統的な生活は、外部からは「過去のもの」と思われがちだが、現実には太陽光発電、携帯電話、衛星アンテナなどを取り入れ、現代化を果たしている。
とくに、草の状態や気象条件をスマートフォンで把握することで、移動のタイミングを判断するなど、テクノロジーと共存する新しい遊牧民像が広がっている。
文化面でも、ナーダム祭のような国を挙げた伝統行事が健在であり、言語や慣習、家畜との関係性など、遊牧に根ざした価値観は依然として力強い。
これは単なる過去の継承ではなく、むしろ現在のモンゴル社会にとって重要な“もう一つの暮らし方”として存在感を放っている。
2. 都市化の進行とその課題
一方、首都ウランバートルでは都市化が急速に進んでいる。
特に1990年代以降の市場経済化と国際支援の流入により、地方からの人口流入が加速し、いまや人口の半分以上が都市部で暮らしている。
都市化によって高層ビルやショッピングモールが建設され、教育や医療へのアクセスも改善されてきた。
だがその裏で、郊外には“ゲル地区”と呼ばれる簡易居住区が拡大し、インフラの未整備、交通渋滞、冬季の大気汚染といった問題が深刻化している。
特にゲル地区では、石炭ストーブによる暖房が多く使用されるため、冬の間は空気汚染がWHO基準の数十倍に達する日もあるとされる。
また、急増する若者の就職先が十分に整備されておらず、雇用のミスマッチや教育格差といった都市特有の課題も顕在化している。
これらは、都市化がもたらす利便性と引き換えに、都市構造や社会のひずみを浮き彫りにする要因となっている。
3. 共存のかたちと未来への展望
都市と草原という2つの世界が、断絶するのではなく、共存する道を模索し始めている。
たとえば、遊牧出身の若者が都市に学びに行き、いずれ故郷に戻って観光や畜産ビジネスを始めるといった“往復型”のライフスタイルが増えている。
また、国際機関やNGOの支援によって、ゲル地区のインフラ改善や職業訓練が行われ、都市と農村の格差是正に向けた政策も段階的に進んでいる。
一部の研究者は、モンゴルを「21世紀型ノマド国家」と捉え、デジタル技術と伝統の融合による新たな社会モデルに注目している。
草原で生きる人々の知恵と都市で暮らす人々の技術や制度が交差することで、持続可能な形の地域社会が育ちつつある。
この「分断ではなく共存」を目指す試みは、世界の他の国々にとっても参考となるかもしれない。
まとめ
モンゴルは今、過去と未来が同時に進行する国である。
草原では古来の遊牧が生き続け、都市ではモダンな建築やテクノロジーが拡がっている。
それは「伝統が残っている国」ではなく、「伝統と革新が共存する国」へと変化しつつあるということだ。
この国のかたちは、今後のグローバル社会における多様な生き方の可能性を静かに示している。
SNOWさんが思うこと
モンゴルといえば相撲が強いの他に、遊牧民というイメージがどうしてもありますが、いまはだいぶ都市化されてきているとのことでもあります。
日本でいうところの農家≒遊牧民みたいな感じでしょうか、農家は徐々に減ってきていて、先日の米騒動の話をするまでもなくずっと問題と言われています。
日本もそうですが、アメリカみたいに大規模農場化されていったら、というのもあると思いますが。
モンゴルの場合は土地に関する法律がそこまで整備されていなかったりで、遊牧民の文化もいまも根強く残っている感じのようです。
日本の場合も大規模農家ってあまり見られない気がしますが、がんばって始めようと思えばできなくはないらしいです。
僕もちょっと興味あるので、また機会があれば調べてみたいと思います。