通勤中や休憩中、ふと「瞑想でもしてみるか」と思う人は、実はかなり少ない。
それは特別なことではなく、むしろ自然な心理反応だと2025年の最新研究は示している。
ただ、思い立ってすぐやらない=悪いこと、というわけでもない。
本記事では、データと最新知見を交えながら、その理由と対応策を探っていく。
1. なぜ私たちは「瞑想しよう」と思わないのか?
マインドフルネスが流行語のように語られる一方で、現実として多くの人が「瞑想をしよう」とは思い立たない。これには心理学的・社会的な背景がある。
2024年にアメリカ心理学会(APA)が発表した報告書では、一般成人のうち「日常的に瞑想を取り入れている」と回答した人は全体の17%に過ぎなかった。
一方、「瞑想に関心がある」と答えた人は48%を超えていた。この「関心はあるけれど、実行には至らない」という状態にはいくつかの共通理由がある。
まず、瞑想は「効果がすぐに実感しにくい」ことが最大のハードルだ。多くの人は5分〜10分の短時間瞑想を試みた後、実感が得られずに中断してしまう。
瞑想に即効性を期待するのは筋トレ1日で腹筋を割ろうとするようなもので、無理がある。
また、Google検索トレンドを見ると、2022年〜2025年にかけて「meditation(瞑想)」という検索ワードのボリュームは安定している。
しかし関連語の中で「how to keep doing(継続方法)」や「meditation motivation(やる気)」も増加している。
このことからも、瞑想の実践そのものよりも「続かないこと」に課題を感じている人が多いことが読み取れる。
さらに、現代社会では「余白」よりも「効率」が重視される。瞑想は「何もしない時間」と解釈されやすく、時間を浪費しているように感じる人も少なくない。
SNSやタスクの波に飲まれる生活スタイルと、瞑想のような静かな行為は、物理的にも心理的にも相性が悪いのである。
2. 瞑想のハードルを下げるために何ができるか?
実際に瞑想を続けている人の多くは、「やり方」ではなく「環境づくり」に工夫している。2025年現在、特に有効とされるアプローチは以下の3つである。
まず一つ目は「ルーチンとの接続」だ。朝の歯磨き後や、コーヒーを入れる前など、既存の習慣に小さく紐づけることで、瞑想が“自動化”されやすくなる。
これは行動経済学で言う「ハビットスタッキング(習慣の積み重ね)」にあたる。
二つ目は「完璧を求めない」こと。
瞑想は“考えが浮かばない状態”を目指すものではなく、“考えに気づく練習”だと捉えなおすことで、失敗感から遠ざかる。
これはマサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジン博士が提唱する「非判断的な気づき(non-judgmental awareness)」という概念に基づく。
三つ目は「アプリやガイド音声の活用」だ。2025年現在、Medito、Calm、Upmindなど無料・有料問わず高品質な瞑想アプリが多数存在する。
特にMeditoは英国NHS(国民保健サービス)との連携で、信頼性が高いとされている。音声で誘導されながら行う瞑想は、初心者にとって非常に有効だ。
このように、行動のハードルを下げることが、実際の継続率に大きく影響している。