地球規模で進む水資源の危機に、新たな科学技術が静かに光をもたらしています。
近年、海水淡水化や汚染水浄化に関する研究が急速に進展しつつあります。
今回は、液体金属を用いた画期的な水処理技術に焦点を当てています。
その可能性と現実的な応用に向けた歩みをご紹介します。
1.未来の水処理:液体スズがもたらす脱塩革命
東京科学技術研究機構の研究チームが、液体スズを用いた新しい水処理技術を発表しました。
この技術は、塩水をスズに接触させることで瞬時に蒸発させ、真水を回収すると同時に、塩分や有用金属を分離・収集することができます。
持続可能な水の供給と金属資源の再利用を両立する、革新的なシステムとして注目を集めています。
※参考「Liquid metal tin is the key to sustainable desalination!(EurekAleart)」
2.熱と金属の力で水と資源を同時に回収
300℃前後に加熱された液体スズに塩水を噴霧すると、即座に水分が蒸発、水蒸気は冷却装置により真水として回収されます。
残留する塩類(金属イオンなど)はスズ中に一時的に溶け込み、冷却時に分離・析出します。
プロセス全体は電力をほとんど必要とせず、太陽熱を主な熱源とする構成が想定されています。
特に砒素などの有害物質を含む地下水の処理にも応用が期待されており、開発途上国への貢献も視野に入っています。
出典:東京工業大学
3.スズという素材が持つ“選択的吸着”
この技術の核心は、スズという金属の性質にあります。
スズは高温で液体状態を保つだけでなく、金属イオンを一時的に取り込む“選択的吸着”性を持ちます。
そのため、水の蒸発と同時にナトリウムやマグネシウムなどの金属を吸収し、冷却段階で析出させることで、高純度の水と金属資源を効率よく分離することが可能です。
さらに、繰り返し加熱・冷却を行ってもスズ自体の劣化が少なく、経済性・耐久性の両面で優れた素材とされています。
まとめ
液体スズを活用したこの新技術は、真水の確保と資源の有効利用という2つの課題を、ひとつのプロセスで解決する可能性を秘めています。
再生可能エネルギーと組み合わせることで、電力インフラが未整備な地域でも、持続可能な水処理が実現できる点は、社会的にも非常に意義深いものです。
今後のスケールアップ実験や社会実装への動きに、静かな期待が寄せられています。
SNOWさんが思うこと
ろ過って日本で住んでいるとそこまで気にすることのない技術かもしれないですが、たぶんいたるところで使われていますよね。
液体金属というと、映画「ターミネーター2」を思い出してしまいます。
そういうことではなくて、液体金属というくくりでいうと、ろ過技術の他にエネルギー分野や建築分野に活用されそう、あるいはすでに応用されているとのこと。
液体スズの話に戻りますと、海水淡水化、有害地下水の処理、工業排水からの有用金属回収、災害・緊急時の浄水システムなど、様々な応用が考えられるそうです。
気付いたらいつの間にか、生活に溶け込んでいたということもあるかもしれないですね、液体金属だけにじゃないですけどね。