周囲との円滑な関係性を築くために、「何を言うか」よりも「誰が言うか」が重視される場面が多くあります。
特に職場や家庭、地域社会では、正論ですら受け入れられないことがあります。
それは、発言の内容だけでなく「発言のタイミング」や「人間関係」が無視できない要素だからです。
この記事では、発言の効果を高めるための信頼構築と伝え方の工夫について考察します。
1.信頼関係のない正論は、むしろ逆効果になる
「正しいことを言ったのに反発された」という経験は、多くの人にとって身近なものです。
2023年に実施された日本能率協会の調査では、職場の人間関係で「意見が正しいかどうかよりも、誰が言ったかで受け止め方が変わる」と感じている人が全体の68.4%にのぼりました。
この結果は、発言の内容そのものより、発言者との信頼度が重要視されていることを示しています。
正論は論理的に正しくても、「いきなり」「唐突に」「上から目線で」言われると、相手の心理的な抵抗を生みます。
「この人は私を否定したいだけでは?」「理解しようとせずに指摘している」と受け取られがちです。
つまり、発言の正しさが通用するのは、その前に信頼の土台が築かれている場合に限られるのです。
2.発言の「受け皿」を育てる:関係性づくりの重要性
発言の力を発揮するためには、「受け皿」が必要です。
ここでいう受け皿とは、相手との心理的な安心感、つまり信頼関係のことです。
この関係性は、一朝一夕に築けるものではなく、日々の小さな積み重ねがベースになります。
たとえば、相手の話をきちんと聞く・共感する・ちょっとしたお願いに応える・軽い雑談に付き合う。
こうした積極的な関わりを通して、「この人なら話を聞いてみよう」「きっと悪意はないだろう」と思ってもらえる土台が育ちます。
職場でも家庭でも、発言力のある人は総じて「まず信頼される人」であることが多いのです。
信頼のベースができた上で発言すれば、少し厳しめの内容でも「愛のあるアドバイス」として受け入れてもらえる可能性が格段に上がります。