イクイノックス産駒が、初年度からセール市場を席巻した。
競走馬として世界最強と評されたその血統に、セリ会場が熱狂する。
史上3位タイとなる高額落札を含め、相次ぐ億超えの取引は前例を見ない。
これは、日本競馬の勢力図すら変えかねない「新しい血」の胎動である。
1.2025年セレクトセールにおける注目の出来事
2025年7月15日に北海道・苫小牧で行われたセレクトセール当歳馬セールにおいて、イクイノックス産駒が市場を驚かせた。
この日は計24頭のイクイノックス産駒が上場され、そのうち23頭が落札された。合計落札額は約35億6,500万円に達し、平均落札価格は1億5,500万円超という高水準となった。
中でも注目されたのは「ミッドナイトビズーの2025」で、5億8,000万円(税抜)という価格で落札され、これは日本競馬史上3位タイの高額となった。
また、「ゴーイングトゥベガスの2025」は4億5,000万円、「ムーチョアンユージュアルの2025」は2億6,000万円で落札されており、初年度産駒としては異例の評価を受けている。
これらの馬はいずれもノーザンファーム生産で、名門牝系を母に持つ良血馬たちであることも評価の後押しとなった。
出典:ペケの日常ch
2.なぜイクイノックス産駒がここまで高騰したのか
まず注目すべきは、イクイノックス自身の実績だ。
2022年の天皇賞(秋)、有馬記念、2023年のドバイシーマクラシック、天皇賞(秋)といったG1を立て続けに制し、ロンジン・ワールドベストレースホースランキングでも世界1位の評価を受けた。
父キタサンブラック、母系は名牝シャトーブランシュを通じてサンデーサイレンス、トニービンといった日本競馬を象徴する血が集約されている。
そのうえで、「晩成型かつ完成度が高い」特徴が、種牡馬としての成功イメージを後押ししている。
また、市場の視点でいえば「初年度産駒はプレミア価格がつきやすい」という構造がある。
実際にディープインパクトやキズナなども初年度産駒の価格がピークだった。とはいえ、イクイノックスのケースはその域を超えている。
これは競馬関係者の「走るだろう」という期待が、理屈を超えて信仰に近い領域へ達していることを示している。
実際、社台グループやサトミホースカンパニー、藤田晋氏など、国内有力オーナーたちが多数参入している事実が、その期待を裏付ける。
出典:メントスコーラおじさん
3.今後の展望と競馬界への影響
注目は、イクイノックス産駒が実際に走るかどうかにかかっている。初年度産駒たちは2027年春以降にデビューを迎える見込みで、そこから本格的な評価が始まる。
一方で、血統的な新陳代謝という点でも、イクイノックスは重要な存在だ。
日本の競馬界は長年サンデーサイレンスの血統に依存してきたが、イクイノックスは「サンデーの血を引きつつも、父キタサンブラック由来の多様性」を持っており、繁殖戦略に新たな選択肢を与える。
さらに、高額落札された産駒たちはいずれも母系が米G1馬や欧州牝系などと結びついており、国際競走や凱旋門賞への意識も強く感じられる。
「国内G1を勝つ馬」ではなく、「世界と戦う血統」を意識した購買が増えてきた点でも、日本競馬が次のステージに移ろうとしている兆候といえるだろう。
出典:亀谷敬正の競馬血統辞典
まとめ
2025年セレクトセールでのイクイノックス産駒の高騰は、単なる一過性のブームではなく、日本競馬の未来を占う試金石となった。
世界的評価を受けた現役最強馬の血が、今ようやく市場に解き放たれた。
果たしてこの血統が「走る血」となるのか、それとも幻想に終わるのか。2年後の競馬場で答えが出るその日まで、期待と不安が交錯する。
SNOWさんの見解
イクイノックスといえば、エルコンドルパサーみたいな謎な雰囲気の馬名で、めっちゃくちゃ強くて、でも若駒のころは決め手に欠いた馬。
三冠馬のような華やかさもあったような気がするけど、ライバルも強しで、苦労して成長して、最終的に理不尽なまでの強さを手にした馬。
そしてその理不尽な強さで勝ちまくるわけですよね、ドバイでも勝って、帰ってきても勝って、ジャパンカップは強め追切りみたいなレースで勝ち切ってレコード。
ここまで書いて思ったけど、関係者も怖くなったんじゃないですか、どんどん強くなる、F1ぐらい速くなるんじゃないかってそれはないか。
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